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東芝科学館「わくわく実験ショー」(2004年01月)

水嶋一江&ストリングラフィ・アンサンブル コンサート

会場:東芝科学館 (神奈川県 川崎市)
1月10日(土)13:00〜   14:30〜 ( 共に45分)
出演:水嶋一江・KIKU・鈴木美奈子




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「わくわく実験ショー」は東芝科学館で定期的に行われている科学に関連するイベントで、今回は、ストリングラフィ アンサンブルのコンサートが行われた。

ストリングラフィは中学校の理科の教科書(1分野上巻・大日本図書)にも紹介されている様に、“音”のサイエンスが楽器という形をまとい、音楽を奏でられるまで発展したものある。原理はいたってシンプルで、絹糸の両端に紙コップを取り付けた、“糸電話”の糸を指で擦って振動を起こし、それが紙コップに伝導して増幅された振動が“音”になるという発想だ。糸と紙コップというシンプルな素材からは想像も出来ないくらい大きな音が出る。あえて例えれば蓄音機から聞こえてくるヴァイオリンの様な音色だ。また奏法を工夫することによって、小鳥のさえずり声、蛙の声、虫の音、太鼓といったイメージ豊かな音の世界を紡ぎだす事も可能だ。

実際のコンサートでは100本近くの糸電話=ストリングラフィが用いられる。丁度ハープを横にしたような具合に、15本〜25本の糸が床と水平に張られたものが”1セット“である。このストリングラフィは、実はドレミファソラシドに調弦されている。「糸の長さが長い程低い音が出る。」「糸を強く張る程高い音が出る。」「糸が太い程低い音が出る。」という3つの原理を応用して演奏者自身が楽器を製作するのである。コンサートにはプログラムに応じて3セットから5セットのストリングラフィを使用するが、それぞれ音域によって”ソプラノ“”アルト“”ベース“と名付けられている。ソプラノは主にメロディを担当するパートでヴァイオリンに近い音域で構成されている。アルトはビオラに相当して内声を担当し、ベースはチェロに相当してベースラインを受け持つ。今回のコンサートでは、3人の奏者がそれぞれソプラノ、アルト、ベースのパートを演奏したが、そのアンサンブル効果は弦楽四重奏にパーカッション、鳥の声、虫の声などの効果音を加えたようなダイナミックなものだ。

一番長いストリングラフィ=一番低い音は15mもあり、2m〜15mの糸が100本近くセットされた会場は、まさに空間全体がが巨大な弦楽器に変貌したかのような風景だ。演奏方法もユニークで、各奏者は大きな楽器に沿って縦横無尽に動き回り、まるで踊りながら演奏している様に見える。
ストリングラフィは、“音とは何か”“音階はどのようにできているのか”といった科学の原理を、職人技の様な緻密な手作業によって楽器という形に具体化し、さらに感性や想像力を駆使して“音楽”という抽象的な世界に昇華させるという、重層的な成り立ちを持った楽器である。現代の生活はコンピューターに代表されるような便利な機器に囲まれている。しかし、何がどうしてそのようなことができるのか、という仕組みの部分は意識されないことがほとんどである。今回は2回のコンサートに、科学館「友の会のメンバー」など計150人近くの親子を中心とする観客が集まったが、紙コップと絹糸という身近な物が、知恵と工夫と好奇心によって豊かな創造の世界をもたらすことに驚きと感動を覚えたようであった。



演奏曲目:
ビヴァルディ「春」「大きな古時計」「もののけ姫」「世界にひとつだけの花」他

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